フジツボ防除を目的としたスパッタリング法によるパターン状薄膜の作製
1.フジツボ
フジツボが船体や発電所冷却系の管などに付着することによる経済的被害や環境問題が問題となっています。以前はトリブチルスズ(TBT)を代表とする有機スズ系化合物塗料が使用されていましたが、有機スズ化合物の持つ毒性が環境に悪影響を及ぼすとして使用が禁止されています。そのため、現在はTBT塗料に代わる様々な付着防止対策の研究が行われています。
図1.船体に付着したフジツボ[1]
2.パターン形状薄膜とステンレス薄膜
・パターン形状薄膜
パターン形状薄膜とは、パターンマスクなどを用いて基板表面上に凹凸を作った薄膜です。
フジツボの付着行動には表面形状の凹凸も関わっているとされており、またパターン形状によってフジツボの付着を低減した例もあります。[2][3]
そこで、意図的にパターンを形成したサンプルを使用することでフジツボの付着行動に影響を与えるかを評価します。
・ステンレス薄膜
パターン形状の効果を検証するため、ガラス基板上にスパッタリング法によりパターン形状のステンレス(SUS304)薄膜を成膜して実験に用います。
3.本研究の目的
パターン形状ステンレス薄膜の作製とそれによるフジツボの付着評価を目的とします。
スライド
[1]YUIME japan https://yuime.jp/post/fishing-boat-barnacles-countermeasures
[2]堀内麗子, 小林聖治, 亀山雄高, 水谷正義, 小茂島潤, 勝山一郎, タテジマフジツボキプリス幼生の基材選択性と付着に及ぼす微細凹凸表面形状の影響, 材料と環境, 58巻8号, P.302-307
[3]室ア喬之, 野方靖行, 微細構造表面におけるフジツボ幼生の付着前行動, 日本マリンエンジニアリング学会誌, 第52巻 第1号, P.14-18
[4]塚村慶子, 武田正良, 寺山朗, 槇本佳泰, “海洋で利用する資材の生物付着耐性評価試験”, 『広島県立総合技術研究所 西部工業技術センター研究報告』54,p.61-64